賃貸不動産の維持コスト

不動産投資において、一棟マンション(RCマンション、SRCビル)、一棟アパート等を経営するための維持コスト、維持費にはどのようなものがあるかを解説します。租税公課以外については通常賃貸不動産管理会社を通じて支払います。

不動産管理会社へ支払う管理費用

  • 定率管理報酬(毎月)
  • マンション、アパートを管理するための費用。不動産管理会社に支払います。毎月の賃料の5%程度を不動産管理会社に支払います。定率管理報酬での委託業務範囲は、入居者の募集業務、入居者の人物選定(信用チェック)、賃貸借契約書等の必要書類の作成・管理、仲介業者に対して行う媒介契約の締結、入居者に対して行う賃貸借契約の締結等を行います。賃貸不動産管理業務の詳細はこちら。

  • 定期清掃費用(毎月)
  • マンション、アパートを維持するために最低必要な清掃にかかる費用。不動産管理会社に支払います。30戸程度までの場合、毎月10,000円~20,000円程度。定率管理報酬の範囲で基本的な清掃を行って貰えることもあります。

  • 広告費(入居者入替時)
  • 新規入居者を募集するための広告費用として、賃料の1ヶ月分程度を支払います。但し、不動産管理会社によっては、(他の仲介業者に情報を流さずに)自社のみで募集を行う場合は広告費用がかからない管理会社もあります。管理会社選びの際には事前に確認しておきましょう。他の仲介業者を通じて入居者が決まった際は、入居者が支払う仲介手数料は別の(入居者を決定した)不動産会社に入るため、いつもの管理会社の取り分が無くなってしまうため、管理会社から広告料と称して賃料1ヶ月分程度を請求されます。

  • 更新手数料(入居者の更新手続き時)
  • 入居者が2年毎に更新手続きを行う際に、更新料と称して賃料の1ヶ月分程度を支払うことがありますが、通常、このうちの半分は不動産管理会社の取り分となり、残りの半分が大家に入ってきます。更新料が発生するかどうかは、物件より、また地域の慣習により異なります。

  • 建物、設備機器の交換修理費用(発生の都度)
  • 築年数が20年を超えると様々な設備機器類が故障し交換修理費用が発生する頻度も高くなります。例えば、蛇口の水漏れ、換気扇、エアコン、ドアノブの故障など。ちょっとした故障でも1回当たり最低数千円に加えて部品代、交換機器代が発せいします。1回あたり3万円以下の修理交換費用については大家への確認不要と事前に取り決めを行って置けば不動産管理会社との連絡も少なくなり、不動産管理会社にとっても仕事がしやすくなるでしょう。

  • 共用部電灯交換(各電灯、数ヶ月~2年毎)
  • 各電灯交換毎でみると頻度は少なくても、大きなマンションになると電球を大量に使っているため、その交換頻度も高くなります。不動産管理が交換を行う場合、1個交換あたり1000~1500円がかかります。

入居者入替時の室内リニューアル等にかかる費用

入居者の退去、新規入居時の室内リニューアルにかかる費用は次のようなものがあります。

  • 壁紙交換費用(入居者入替時)
  • 経年変化に伴う劣化に関する交換費用は通常大家負担になります。その費用は不動産管理会社、地域などによっても異なりますが、一般的に1㎡あたり、900円~1200円程度の壁紙交換費用が発生します。

  • キッチン交換費用(15~20年毎)
  • キッチンについては、15年~20年程度経過するとかなり劣化するためキッチン丸ごと交換が必要になります。築15年を経過した賃貸不動産を購入する際は、入居者入替時に設備機器類の交換費用が高額になることも覚悟しておきましょう。キッチン交換費用は、安いもので10万円弱~戸棚や換気扇などもセットでリニューアルすると30万円前後かかります。築20年を超えたマンションで物件競争力をあげるために、設備機器類のリニューアルも検討しましょう。

  • エアコン交換費用(5~10年毎)
  • 大家負担でエアコンを設置している物件については、5~10年程度でエアコンの交換費用が発生するでしょう。交換費用は、家電量販店で自分で購入すると1台5万円~業者にお願いすると10万円弱程度かかるでしょう。物件競争力を上げるためにエアコンを設置する場合も、複数部屋がある場合はリビング等に1室のみ設置するだけでも十分でしょう。

  • 給湯器交換費用(10~20年毎)
  • ガス給湯器については10年~20年で寿命により交換が発生します。ガス会社からリースで購入する場合は1室月額1000~2000円程度、一括購入の場合は10万円程度、またプロパンガス会社を変更することにより、給湯器全てをプロパンガス会社負担で(大家負担ゼロで)交換するという方法もあります。プロパンガスは、都市ガスと比べてガス代が高いため、入居者にとっては都市ガス物件の方が好まれます。また、プロパンガス業者により給湯器を設置した場合は、結局はその費用がガス代に上乗せされることがあり、以上にガス代の高い物件になると入居者満足度が下がり、結局は入居率がダウンしてしまうことになるのでそのバランス調整が必要です。

  • 洗面台、風呂場関連の維持コスト(15~20年毎)
  • 洗面台の鏡が劣化した場合の鏡のみ交換費用は20000万円弱程度、洗面台丸ごと交換の場合は5~10万円程度かかります。
    風呂場の壁などが劣化した場合の塗装費用は1万円前後、浴槽のみ交換は5万円前後かかります。風呂場前面リニューアルには数十万円の費用がかかります。水廻りのリニューアル費用はかなり高額になります。

  • フローリング交換費用(10~20年毎)
  • 和室から洋室へのコンバージョン、またはカーペット床からフローリングへのコンバージョン工事にかかる費用は、6畳1室あたり床交換だけで10万円前後かかります。和室からフローリングへの交換の場合は、襖(ふすま)や壁を洋室風にリニューアルするためにさらに費用がかかります。築20年を超えたマンションでは今でもカーペット床の部屋もあり、入居者入替の際はフローリングへの交換が発生するでしょう。

  • ビニールタイル床交換費用(数年毎)
  • ビニール床の洋室の床交換や、玄関口の床の交換費用は5000円/㎡前後かかります。

  • 鍵交換(入居者入替時)
  • 入居者入替時には、通常セキュリティのために鍵交換を行います。入居契約条件により、入居者負担の場合と大家負担の場合がありますが、大家負担の場合は業者により4000円~15000円程度かかります。予備の鍵を用意しておき、入居者が入れ替わる度にその予備と交換し、取り外した鍵を予備として保管するという使い回しを行うことによりコストを少し下げることができます(このような使い回しを行っている大家、不動産管理会社が多いようです)。

  • 畳の表替え(入居者入替時)
  • 畳1枚あたり、5000~10000円程度かかります。日焼けや劣化が少ない場合は表替えを行わずにそのまま次の入居者を募集することもあります。

  • ガラス交換(10~20年毎)
  • 防火のための鉄線入りガラスは昼夜の温度差や劣化によりひびが入ってしまうことがあります。その際交換のためにかかる費用は1枚あたり2~3万円程度です。

各設備機器の修理、補修、交換にかかる費用

  • トイレのつまり補修
  • 出張、便器取り外し、調査費用1万円、高圧洗浄15,000円、管内カメラ調査25,000円程度。

外回り維持コスト

  • 樹木の剪定費用(年1回)
  • 樹木が植えられているマンション、アパートの場合樹木が伸びすぎないよう1年に1回程度の剪定作業が必要です。その費用は10~20万円程度。

  • 除草費用(年4回程度実施)
  • 駐車場や庭、外構などの除草費用は、除草剤散布の費用が年間3~5万円程度かかります。

  • 下水管清掃(1~5年毎)
  • キッチンからの油や風呂場の髪の毛などが下水道につまることを防ぐために、数年に一度は下水管の高圧洗浄を行う必要があります。また下水管が詰まった場合は、1階部分の下水管から水が溢れる場合もあるので、その際は応急処置費用もかかります。

建物維持コスト

  • 消防点検費用(毎年)
  • マンションの規模や地域の条例などにより毎年の消防点検が義務づけられている場合に発生します。その点検費用は1年間に1回、5~10万円程度です。ただし、緊急通報装置の電池交換費用、消火器の交換費用(5~10年に1回)などが別途かかります。

  • 屋上防水、外壁防水(10~15年毎)
  • 陸屋根の防水、ルーフバルコニーの防水加工は10~15年程度で防水加工を行う必要があります。その費用は面積(㎡)×1~2万円程度かかります。防水業者によって、また防水加工方法によってその費用には大きな開きがありますので、複数業者に対して見積依頼し最適な業者を選びましょう。外壁のクラック等により雨漏りが発生した場合は、コーキングの打ち替えや、タイル壁全面に対して防水加工などの工事が発生します。

  • 鉄部塗装(約5年毎)
  • 非常階段や、階段手すり、自転車置き場、玄関ドアなどが鉄製の場合は劣化により錆びが発生するため数年毎に塗装作業が必要になります。また劣化が激しい場合は、手すりを交換するとなるとさらに高額な費用がかかります。非常階段が錆びた場合は早めにメンテナンスを行いましょう。あまりに劣化しすぎると、階段に穴が空き階段丸ごと交換になるとさらに高額な費用がかかってしまいます。手すり等については、アルミ製、またはステンレス製の方が鉄製よりもメンテナンス費用がかかりません。

  • 集合郵便受け交換(15~25年毎)
  • 集合郵便受けが劣化してぼこぼこになったり錆びたりした場合は郵便受け丸ごと交換が必要になります。その費用は、戸数×(2~3万円)程度です。

  • 外廊下の防水、塗装(10~20年毎)
  • 外廊下の床部分、立ち上がり箇所の防水塗装、外廊下の壁や天井の塗装を行うことにより、古くなった外観を少しでも明るく奇麗に見せられます。塗装費用は、30戸程度のマンションの場合、80万円前後かかります。

    賃貸不動産の毎年の租税公課

    • 固定資産税(毎年)
    • 毎年4月~6月に、その年の1月1日の不動産所有者に対して固定資産税の支払い通知が届きます。ワンルームマンション1室の場合の固定資産税は年間5万円前後ですが、1棟マンションにもなると、固定資産税はかなり高額になります。筆者が所有するRCマンションの固定資産税の年額は、13室のもので年間70万円弱、33室のもので年間220万円程度になります。これを年間4回に分けて4~6月頃、7~8月頃、12月頃、2月頃に4期に分けて分割支払いします。支払い時期については、その不動産を管理する都道府県により1ヶ月程度前後します。

    • 消費税(毎年)
    • 居住物件については家賃に対して消費税がかかりませんが、業務利用のテナント物件や駐車場の月額賃料については消費税がかかります。ただし、課税売上高が1000万円以下である場合は、消費税を納める義務が免除されます。

    3階以上の建物の維持コスト

    • 受水槽、加圧ポンプ、揚水ポンプの維持コスト(10~15年毎)
    • 3階以上の建物の場合、水道本管からの圧力によって直接供給できず3階以上に加圧給水するためのポンプ等の設備が必要になります。受水槽については、通常1年に1階の清掃、点検費用が10万円前後かかります。また加圧ポンプ、揚水ポンプについては、10~15年程度で交換が必要になり、その交換費用は100~200万円程度かかります。停電や故障により、即断水してしまうため日頃のメンテナンスも欠かせません。メンテナンス費用は年間数万円~10万円程度かかります。

    • エレベータの維持コスト(毎月)
    • エレベータが設置されているRCマンション等の場合は、エレベータの保守点検のための維持コストがかかります。そのメンテナンス費用は月間数万円かかります。また昇降機定期検査のための費用もかかります。

    • エレベータの維持コスト(10〜20年毎)
    • エレベータの修理費用。電磁接触機、カゴ位置検出装置、電磁コイル、制御用基盤交換費用、20万円前後。アップチェックバブル交換、アジャスター交換、バルブ電磁弁弁部交換セット、30万円前後。等、エレベータの各部位毎に寿命により交換修理が発生します。